Synergyシナジー

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遊休不動産の利活用を目指して

  • 株式会社パルマ
    代表取締役社長(2021年10月現在) 高野茂久
  • 日本郵便輸送株式会社
    管財部長 高見 昭
日本郵政キャピタルから出資を受けたかった理由

出資先 株式会社パルマ

日本郵政キャピタルから出資を受けたかった理由

高野社長: まず日本郵政キャピタル株式会社(以下、日本郵政キャピタル)さんから出資を受けることになった経緯についてお話ししたいと思います。弊社はトランクルームやレンタル収納スペースといったセルフストレージ業界の国際市場において、約6割のシェアを獲得しています。シェアが過半数を超えているため業界のプラットフォームになっていますので、安易に出資を受けてどこかの企業の強い色が付いてしまいますのは、あまり好ましくない状況だったんです。例えばある企業から出資を受けたとしますと、その企業のライバル社は弊社と取引しにくくなってしまう、というように。でも日本郵政グループの一員である日本郵政キャピタルさんでしたら、弊社の取引先である皆様にもそういった心配をかけることが少ない。また、日本郵政グループさんと今後新しい取引ができることも期待できるとも思い、出資をお願いすることになったんです。2018年のことでした。

高見部長: 今回の事業提携のきっかけになったのは、日本郵政キャピタル株式会社から「不動産関係で情報交換をしましょう」とお声がけいただいたのがきっかけです。弊社は拠点となる郵便局と郵便局の間における郵便物やゆうパックのトラック輸送を担っている会社なのですが、その関係でトラック輸送の営業所や社宅跡地といった今は使っていない遊休不動産を持っていたのです。最近は物流の競争が激しい時代でもあるので、資産の活用にも力を入れて収益を上げていこうという方針なのですが、弊社の遊休不動産は駅近くではないというように利用者が制約されるような立地の場合が多く、なかなか借り手を見つけるのが難しいという問題がありました。今回の旧綾瀬北営業所跡地も同様でして、利活用を諦めかけていた時がありました。

高野社長: 日本郵政キャピタルさんから出資を受けて以降、具体的な事業連携を行うために色々模索してきたのですが、トランクルームにこだわらずまずは実績を作りましょうということで出てきた話が本件です。日本郵政グループとしてこれまでに旧綾瀬北営業所跡地を活用すべく色々動かれてきたと思うのですが、元々がトラックヤードでしたので、類似の利用法を念頭に色々相談されていたのではないでしょうか。そこで我々が考えたのが、発想を変えて全く違う使い方をされるかもしれない会社に当たってみようということでした。そうすれば、思いもよらなかったような発想が出てくるかもしれないと期待したのです。その流れで、新しいアウトドアブランドを作ろうとされていたアパレル業の株式会社アンティローザ(以下、アンティローザ)さんにお話ししたところ、非常に関心を持っていただき、話が進展しました。

高見部長: これまで日本郵便株式会社と個別に情報交換することはあったんですが、日本郵政グループ全体で情報交換するという機会はほとんどなく、実は日本郵政キャピタルがどういう業務をされているのかもあんまり存じ上げていませんでした。ましてや遊休不動産の利活用とこのようにきちんとつながっていくとは全く思っていませんでした。でも、最初はよくわからなかったんですけど同じ日本郵政グループの一員ということですごく安心感はありましたし、調べてみたら様々なベンチャー企業さんとのつながりがあることも分かりました。「それなら何か新しいアイデアが出るのではないか」と思い、「不動産関係で情報交換をしましょう」とお声がけいただいたのに反応する形で話を聞きに行きました。その中でご紹介いただいたのが、株式会社パルマ(以下、パルマ)さんだったのです。

自分たちだけでは出せなかった遊休不動産の活用アイデア

連携先 日本郵便輸送株式会社

自分たちだけでは出せなかった遊休不動産の活用アイデア

高野社長: 今回は弊社がマスターレッシーとして日本郵便輸送株式会社さんから旧綾瀬北営業所施設を一括して借り上げまして、それをエンドテナントのアンティローザさんに転貸するというマスターリースの仕組みを採用しています。アンティローザさんが旧綾瀬北営業所跡地で新しいアウトドアの生活スタイルを提案する拠点「NorMo Ayase Garage」を運営していくことになります。

高見部長: パルマさんに実際に現地を見ていただいた上で、用途について検討いただきました。色々とアイデアをお持ちの中で、集客施設としての利用は我々が全く思いつかなかったものでした。

高野社長: 従前の店舗形態、例えば駅ビル型のショッピングモールに入っていたような店舗は、実はコロナ前に閉めてしまったというケースも多々ありました。これからはECが主流になっていくからというのが主な理由だったんですが、その判断は非常によかったんです。でもそこからまた時代が変わり、今度はECだけではなくて、在宅勤務が進んだり、住むのも郊外を選んだり、あるいはレジャーも外でキャンプをやったりというような新しいトレンドの中で、洋服だけではなくてトータルな生活スタイルをアピールしていくべきではないかなと。それにはやっぱりインターネット空間だけではなくて、アウトドアを取り扱うならリアルな空間も必要ではないかと考えまして、そのモデルとして取り組みたいということでお話しさせてもらいました。

高見部長: 非常に発想が柔軟というか、私どもには思いもよらなかったようなアイデアです。当時はアウトドアが流行しているということも存じ上げていなかったのですが、面白いと思いました。日本郵政キャピタルさんを通じての企業のネットワークから色々なアイデアが出てくるんだということを、すごく実感しました。

高野社長: 我々にとってベストな形は、郵便局の中あるいは郵便局の敷地の中でトランクルームの事業をさせていただくことだったんですけど、残念ながらなかなか適した不動産が見つかってなくて、それはまだ進んでいません。日本郵政グループさんがお持ちの不動産で「いいなあ」と思うものがありましても、トランクルームを作るための行政の諸規制を満たしていないため無理だということが往々にしてあります。逆に私どもが「ここにトランクルームを作りたい」と思う物件があっても、今度は逆にトランクルームとして使えるほどのスペースが空いていないので、どうしようもできないということもあります。そのためトランクルームについてはなかなか進展していないんですけれども、発想を変えたのがよかったと感じています。日本郵政グループさんの中では、駅前の一等地とかではなくてもほかの遊休不動産で有効活用したいというようなものをたくさんお持ちだというのを聞きましたので、じゃあそれらを有効活用してまず実績を作れば、そこからトランクルームの話につながっていくんじゃないかと。また私どもにとっても、こういった案件に関わらせていただくことで、トランクルーム一辺倒ではなくても、我々のできることが広がっていくとも感じています。

出資概要

日本郵便株式会社の子会社である日本郵便輸送株式会社が保有する旧綾瀬北営業所施設を、株式会社パルマがマスターリースの形態を採用して借り受け、エンドテナントである株式会社アンティローザに転貸。アンティローザはこれらの土地と建物を、新しいアウトドアの生活スタイルを提案する拠点「NorMo Ayase Garage」として有効活用することを目指す。日本郵政キャピタル株式会社は2018年にパルマへ出資していた縁もあって、遊休不動産を活用する道を探っていた日本郵便輸送とパルマを結ぶ仲介役となった。

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