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日本郵政グループの「JPビジョン2025」のサブタイトルは「お客さまと地域を支える『共創プラットフォーム』を目指して」。「共創」という言葉は、一貫して日本郵便の取り組みの幹となっている。
その日本郵政グループが、地域のベンチャー企業とともに、地域社会の隙間を満たすべく立ち上げたプラットフォームが「ローカル共創イニシアティブ」である。そして、「ローカル共創イニシアティブ」の一環で地域に派遣された社員が、価値創造手法の一つとして選んだのが、NFTの技術だった。
ローカルとNFT、一見、遠いところに存在するキーワードが共創という言葉で強く結びつく。今回のインタビューでは「ローカル共創イニシアティブ」チームと「NFTマーケティング」のトップランナーであるSUSHI TOP MARKETINGの関係者に、なぜ、ローカル共創にNFTなのか、その裏側にある想いについて聞いた。
インタビュアー: まずは「ローカル共創イニシアティブ」の生い立ちについて、教えてください。
日本郵便株式会社 地域共創事業部 自治体連携事業室 三好(以下、日本郵便 三好):
全国津々浦々にある郵便局。この強みを活かして更なる価値を生み出していけないか。地域から逃げない存在として、そこにある郵便局が培った地域のみなさまとの関係性や地域に対する理解の深さをビジネスに活かしていけないか。そういった着想が起点となり、「ローカル共創イニシアティブ」の構想が練られました。
そして、意欲のある若手・中堅社員を地域に派遣し、地域のプレイヤーとして直接課題に向き合いながら新しいビジネスを創出する仕組みとして出来上がったのが、2022年4月のことです。
最初に8人の社員が5地域へ派遣されました。それから毎年、社員を派遣し、各地域で協業パートナーと議論を深めながら新規事業の創出に取り組んでいます。本日のインタビューに参加している松浦が3期、光井が4期になります。
インタビュアー: 松浦さん、光井さんのお二方は、具体的にどのような取り組みをされているのですか。
日本郵政株式会社 地域共創事業部 自治体連携事業室 松浦(以下、日本郵政 松浦):
私は島根県大田市にある、一般社団法人石見銀山(いわみぎんざん)みらいコンソーシアムに派遣されて活動しています。人口400人にも満たない小さな地域のまちづくり団体で、観光収益を基に地域課題を解決する取り組みを行っている中で、観光客などの「関係人口」を増やしていくことの重要性を感じています。
そこで始めたのが観光などの接点でNFT(※)を配布し、楽しく集めてもらうことで地域ファン(関係人口)を育てていく「地域共創NFTプロジェクト」です。NFTマーケティングの知見を持つSUSHI TOP MARKETINGの技術を使い、二次元コードを読み取るだけで簡単にNFTを受け取れるデジタルスタンプラリーなどの実証を行いました。その結果を踏まえ、現在では、自治体等からもスタンプラリー業務を複数受託しています。
※NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン):デジタルデータが固有のIDであることを証明する技術。大まかに、デジタルアセットの資産価値を証明する「金融分野」と、技術のみの「非金融分野」がある。SUSHI TOP MARKETINGは「非金融分野」での技術提供を行っている。
日本郵政株式会社 地域共創事業部 自治体連携事業室 光井(以下、日本郵政 光井):
私は宮城県の女川町や東松島市で活動しています。東松島市にはブルーインパルスが所属する松島基地があり、航空祭などには非常に多くの方が訪れます。しかし、これまではその人たちが「どこから来て、どう楽しんでいるのか」が可視化できていませんでした。
そこで、松浦さんの事例を横展開し、ブルーインパルスのイベントなどでNFTを配布しました。結果として、観光客の方の行動を可視化できるようになり、次の施策に繋げていく礎を作ることができました。
女川では、「道の駅おながわ」を運営する団体に籍を置き、共創事業を検討しています。「道の駅おながわ」の運営母体は東日本大震災からの復興と地域活性化を目的とした民間企業であり、ここでの取り組みは共創に加えて、復興という意味合いも持っています。
インタビュアー: 地域共創と新しい技術であるNFTの組み合わせは、非常に面白いですね。より具体的な内容について教えてください。
SUSHI TOP MARKETING CEO and Founder 徳永 大輔(以下、SUSHI TOP 徳永):
これまで、NFTはその概念を理解することに加え、利用シーンにおいて「専用のアプリが必要」であることなど、一般の方には参加のハードルが高いものでした。当社(SUSHI TOP MARKETING)の技術は、二次元コードをスマートフォンで読み取るだけで、簡単にNFTを受け取れる仕組みになっています。いわば「背後にある技術を意識させないユーザーインターフェース」を提供しています。
また、NFTの最大の利点は、名前やメールアドレスといった「個人情報」を取得せず、ユーザーと持続的な接点を持てることです。個人情報を含まないデータを分析することで、「どのイベントに参加したか」「どの地域を訪れたか」といった行動(トークングラフ)を把握でき、より精度の高いマーケティングを行うことが可能になるのが特長です。
日本郵政 松浦:
私はNFTを使った可視化のプロセスを、次のステップで考えました。「石見銀山エリア」の事例でいうと、
ステップ1 未認知層(潜在層)の把握
ステップ2 交流・観光人口の把握
ステップ3 関係人口・二地域居住需要の把握
ステップ4 移住者・定住人口の把握
です。
ステップ毎にNFTを配布するタイミングを設計することで、トークングラフによる可視化が出来るわけです。
日本の人口動態全体で考えると、概ね、地方は住民が減っている傾向があります。その中で地方を活性化するには、交流・観光人口を増やし、最終的には移住・定住人口を増やさなければなりませんが、大事なのはステップ3の関係人口の把握だと思っています。関係人口、いわば、地域のファンを育てることが、マーケティング視点で肝要になるわけです。
インタビュアー:
NFTを使った「ローカル共創イニシアティブ」のアウトプットとして、可視化できるものについて教えてください。
SUSHI TOP 徳永: さきほどトークングラフのお話をしましたが、トークングラフは言い換えると、NFTを使ったCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)ツールになります。顧客のマーケティングデータを集めるのが得意な仕組みです。
日本郵便 三好:
誰がどこにいて、どこに行ったか、参加したイベントは何か。NFTを使えば、個人情報を取得することなく、匿名化された形で人の動きを把握することができます。さらに集まったデータの解析・属性分析を通して、ユーザーをセグメント化することもできます。
地域との接点は、イベント参加・観光・ふるさと納税・SNSフォローなど多岐にわたり、従来はそれぞれのデータが分断されていました。NFTという単一のエンゲージメントポイントを介することで、これらの接点を横断的に把握し、一人のユーザーとしてつなげて見られるようになります。複数の施策にまたがるデータを組み合わせることで、より精度の高いマーケティングデータとして活かしていくことができると考えています。
インタビュアー: NFTだからこそ実現できるマーケティング(NFTマーケティング)の強みと可能性について教えてください。
日本郵便 三好:
ユーザー視点で見ると、まず、個人情報の事前入力や専用アプリの登録・不要でNFTを受け取れるという点が大きいです。地域のイベントに参加する人に毎回、名前、生年月日等を聞く必要はありません。
事業者視点だと「二次元コードを置くだけ」といった手軽な方法によって、地域や施策をまたいだデータベースを構築することができるという点が魅力だと思います。実際に、東京の郵便局に置いた二次元コードを読み込んだ人が、スタンプラリーなどを実施している地域の郵便局でも二次元コードを読み込んでいることが追え、人の動き(人流)を可視化することができました。
このように、使用している仕組みの特徴として、ユーザー・事業者双方が気軽に参加できる一方で、NFTを使うことで半永久的に匿名性のある参加者情報を蓄積・分析できるという点があり、そこに面白みを感じています。
SUSHI TOP 徳永: 拡張性の点で考えると、たとえば、イベントのプレスリリースなどに二次元コードを記載しておいて、その二次元コードを読み込んだ人が実際にイベント参加したかを測定することができます。ユーザー側は二次元コードを2回読み込むだけですが、その裏ではNFTの技術が活用され、ユーザーはユニーク化されるわけです。できることに対して、ユーザー側の負担が少ないことは大きな利点と考えます。
インタビュアー: いままでの取り組みにおいて、ユーザー体験の点で既に進化した点はありますか?
日本郵政 光井: ゲーミフィケーション(ゲーム性を高めること)は意識しました。単に二次元コードを読み取るだけでなく、収集欲を刺激する「クエスト型」にすることで、周遊性を高めました。この事例は女川に展開できると考えています。女川は今年の4月に町制施行100周年を迎えます。震災復興の一つのキーアイテムとして、NFTを使った施策を打っていきたいですね。
日本郵政 松浦: 数千人に数万個のNFTを配布してきましたが、日本郵便の拠点を軸に、人流を生み出すことができるのは、地域共創において、大きな可能性だと感じています。ちなみに石見銀山の著名な観光スポットには「龍源寺間歩(りゅうげんじまぶ)」がありますが、トークングラフを分析したところ、「龍源寺間歩」の次に訪問者が多く、各スポットと双方向で人を送りあっていたのは「石見銀山大森郵便局」でした。人口動態の変化と技術の変化に伴って、郵便局の来訪者数も逓減傾向にありますが、スタンプラリーも一つの要因として、「石見銀山大森郵便局」の来局者数は対前年でプラスになりました。
日本郵便 三好: これらの事例のように、日本全国に郵便局を持つ日本郵便が各地域で同時多発的に施策に関わり、施策をまたいだ横断的なユーザー把握を行うことで、ある特定施策に関わったユーザーだけに特定の情報や特典を付与するなど、さらなるユーザー体験を提供していけるようになると思っています。
インタビュアー: NFTを使った施策の未来は開けているように思いますが、一方で「越えなければいけない壁」はありますか?
SUSHI TOP 徳永: 手前味噌ですが、私たちが提供するサービスのユーザーインターフェースは優れていると思っています。一方で、NFTというと2022年の登場時に過度な期待、特に金融資産としての話題が多くなり「怪しいもの」という印象が残ってしまったのも事実です。私たちが提供するのは、非金融分野でのブロックチェーン技術の活用です。顧客接点を一元管理するデジタルマーケティングツールとして提供しています。デジタルマーケティングの一つのジャンルとして、広く認識されることが課題だと考えています。
日本郵政 光井: 私も認知の問題、特に「怪しさ」「分かりにくさ」の排除に課題を感じています。そもそもNFTは背後にブロックチェーン技術があることもあり、若干の分かりにくさがベースにあります。活用シーンをもっと広め、営業力も高めていくことによって、認知の壁を超え、広く普及段階に移行することが今後の発展のカギになると思います。
日本郵政 松浦: 認知の壁を越えた先には、各地で同時多発的に取り組みが広がった際の、データ管理や成果分析の高度化が次の課題になると考えています。ネットワーク効果が発生することによって、ユーザー数の増加以上に、ユーザーにとってより価値の高いサービスを展開できると思います。言い換えると、如何にデータ、分析を価値に変えていけるか、ということでしょうか。
日本郵便 三好: 関係人口の増大に伴うデータの活用と成果の分配、平たくいうと「地域にどうお金が落ちる仕組みにできるか」が課題になってくると思います。今後は「ふるさと住民登録制度」との連動なども視野に入れて、関係人口となった個人にはメリットが生じる仕組みにしていくことが必要になってくると思います。
取材をしていて印象に残ったのは「ゲーミフィケーション」や「クエスト型」といった、若手ならではの発想が出てきたことだった。三好氏が冒頭で語った『意欲のある若手社員を、地域のプレイヤーとして課題に向き合わせる』という試みが、確かな実を結んでいる。そのことに、NFTマーケティングの取り組みのさらなる発展可能性を感じた取材だった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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